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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)1582号 判決 1977年12月20日

控訴人 昭和五〇年(ネ)第一五三一号事件 丸亀節子 ほか二名

昭和五〇年(ネ)第一五八二号事件 日本道路公団 ほか二名

訴訟代理人 小沢義彦 永田英男小沢義彦 永田英男

被控訴人 昭和五〇年(ネ)第一五三一号事件 日本道路公団 ほか二名

訴訟代理人 小沢義彦 永田英男小沢義彦 永田英男

昭和五〇年(ネ)第一五八二号事件 丸亀節子 ほか二名

主文

一  原判決中、第一審被告名川運送株式会社に関する部分を取消す。

第一審被告名川運送株式会社は、第一審原告丸亀節子に対し金一、六〇八万二、二八〇円及びうち金一五〇万円に対する昭和四一年一一月二六日から、金一、三三八万二、二八〇円に対する同五一年一月一日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第一審被告名川運送株式会社は、第一審原告秋山久美子、同丸亀紘子に対し各金三八九万五、五七〇円及びうち金二五万円に対する昭和四一年一一月二六日から、金三三四万五五七〇円に対する昭和五一年一月一日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第一審原告らが当審で拡張したその余の請求は、いずれもこれを棄却する。

訴訟費用は、第一、二審を通じてこれを一〇分し、その七を第一審被告名川運送株式会社の負担とし、その余を第一審原告らの負担とする。

この判決は、金員支払部分に限り、仮りに執行することができる。

二  第一審原告らの第一審被告名川六太郎に対する本件控訴を棄却する。

第一審原告らが当審で拡張した右第一審被告に対する請求を棄却する。

当審における訴訟費用は、第一審原告らの負担とする。

三  第一審原告らの第一審被告日本道路公団に対する本件控訴を棄却する。

第一審原告らが当審で拡張した右第一審被告に対する請求を棄却する。

第一審被告日本道路公団の控訴により、原判決中同第一審被告に対する部分を取消す。

第一審原告らの第一審被告日本道路公団に対する請求を棄却する。

訴訟費用は、第一、二審とも第一審原告らの負担とする。

事  実 <省略>

理由

一  昭和四一年一一月二五日午後七時二〇分ころ、神奈川県横浜市保土ケ谷区和田町二九六番地先の第一審被告公団の施設管理する通称横浜新道において訴外松原政好の運転する被告車が丸亀智美の運転する原告車に衝突し右智美が死亡するに至つた事実は、第一審原告らと第一審被告公団との間において争いがなく、第一審被告会社、同名川の明らかに争わないところである。

二  そして、第一審被告会社が被告車を所有し右松原がその被用人であつた事実は、当事者間に争いがないから、同第一審被告会社は、自賠法第三条により、本件事故によつて生じた損害を賠償する義務がある。

三  第一審被告会社、同名川は、本件事故は第一審被告公団の管理する本件事故現場における路面構造上の重大な欠陥などと被害者智美の運転上の過失によつて惹起されたものであるから、右松原に過失はない旨主張するので、以下この点について検討する。

<証拠省略>を総合すると、本件事故現場は通称横浜新道(バイパス)と呼ばれる保土ケ谷陸橋上の巾員一三・八メートル、アスファルトによつて舗装された四車線の直線、見通し良好な自動車の交通瀕繁な道路上であつて、同所付近は普通車につき八〇キロメートル、大型車につき六〇キロメートルの時速制限がなされており、本件事故当日は降雨のため路面が濡れていたこと、右松原は本件事故当日の午後七時二〇分ころ空車で前輪が完全摩耗に近い状態にある被告車を運転し、戸塚方面から神奈川方面に向い時速六〇キロメートル以上の高速で第一区分帯を進行し、本件事故現場付近に差しかかつた際、先行する普通乗用自動車との距離が約二〇メートルと接近したため、追突を避けるべく強く制動の措置を講じたところ、自車左後輪がスリップしたので急遽右に転把して中央線を越えて対向車線に進出し、右側欄干と衝突の危険を感じ左に転把して自己の進行車線に復したが、さらに左側欄千との衝突の危険を感じて右に転把し制動措置を講じで中央線を越え、当初制動措置を講じた地点から約九〇メートル離れた対向車線に進入し略々真横になつて停止する直前、折柄対向して進行してきた智美運転の原告車右前部に自車左前部を衝突させ、そのため右智美を脳挫創により間もなくその場で死亡させるに至つた事実を認めることができる。もつとも、<証拠省略>中には、右認定と異なり、松原の運転した被告車の時速は約五五ないし六〇キロメートルであつて、松原は前車との車間距離をとるため軽くブレーキを踏んだところスリップして運転の自由を失つたという部分が存するが、信用できない。けだし、走行速度八〇キロメートル毎時以上の速度で摩擦係数(以下、いずれも湿潤時の摩擦係数を指す。)〇・一以下の路面を走行する場合には、ハイドロプレーニングないしこれに近い現象を引起すが、走行速度七〇キロメートル毎時、路面の摩擦係数〇・二程度の場合には直線走行により通常なんらの異常も起らないこと、しかしこのような場合であつても、走行速度を高めたり(このこと自体摩擦係数の低下を齎らす。)、車輪の摩耗に近い状態での連転とか、急激なハンドル、ブレーキ操作はスリップを起し易い条件となり、摩擦係数〇・三程度の場合においても、急制動すると車輪はロックしてスリップを起し、急ハンドル操作によつて横すべりを起すおそれのあること及び急制動などによつてスリップした場合横向きになるなど向きを変えることがあつても、自動車そのものは蛇行せずして進行方向に滑走するものであることは、<証拠省略>によつて認めることができ、本件事故のころその現場付近における路面の摩擦係数が〇・四七(走行速度六〇キロメートルの場合)であつた事実は、後に説示するとおりであり、これらの事実に基づいて本件事故直前における被告車の速度、進行状態及び松原のとつたハンドル操作、制動措置などの点を検討すると、到底信を措くことができないからである。なお、<証拠省略>中右認定に反する部分は、当裁判所と判断を異にするので採用できず、他に、右認定を覆えすに足りる証拠はない。

右の事実によれば、本件事故は、右松原において、当時路面が濡れていたのに拘わらず、前輪が完全摩耗に近い状態にある被告車を運転しながらも、あらかじめ速度を調節せずに時速六〇キロメートル以上の高速で進行し、前車との追突を避けるためにした強い制動措置、その後におけるハンドル操作、制動措置の不適切に原因するもの、換言すれば、右松原の一方的な過失によるものというべきであり、もとより緊急避難と目すべきものではないから、第一審被告会社、同名川の右主張は失当である。

四  第一審原告らは、第一審被告名川が民法第七一五条第二項の代理監督者に該当する旨主張するが、右条項にいう「使用者ニ代ハリテ事業ヲ監督スル者」とは、客観的に観察して現実に使用者に代わつて被用者の選任、監督を担当している者と解するを相当とするところ、第一審被告名川が右の地位にある事実を認めるに足りる証拠は存しないから、第一審原告らの右第一審被告に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく、失当として排斥を免れない。

五  次に、第一審被告公団の責任の有無について判断する。

(一)  <証拠省略>を総合すると、次の事実を認めることができ、これを覆えすに足りる証拠はない。

(1)  第一審被告公団が設置管理している横浜新道(バイパス)の保土ケ谷陸橋は、昭和三四年九月に竣工した長さ約四九〇メートル、厚さ約五センチメートルのアスファルトによつて舖装された道路であつて、中央線はキャツアイによつて標示されていたこと(なお、右道路が巾員一三・八メートルの四革線であつて当時普通車八〇キロメートル、大型車六〇キロメートルの時速制限がなされていたことは、前判示のとおりである。)。

(2)  この付近の道路は低部を右保土ケ谷陸橋とする緩かな凹型を呈し、その勾配は、戸塚方面から神奈川方面に向い(上り線)保土ケ谷陸橋起点より約一一〇メートル手前まではマイナス三・〇パーセント(水平距離一〇〇メートルに対し三メートルの下り勾配の意)、それより二〇メートルの間隔で、同二・六二パーセント、同二・二五パーセント、同一・八八パーセント、同一・五パーセント、同一・一三パーセント(右陸橋起点で同〇・九パーセント)、同〇・七五パーセント、同〇・三八パーセント、〇・〇パーセント(松原政好が当初に制動措慣を講じた地点は〇・一四パーセント「水平距離一〇〇メートルに対し〇・一四メートルの上り勾配の意」)、〇・二五パーセント、〇・五パーセント、〇・七五パーセント、一・〇パーセント(被告車が原告車と衝突した地点は一・二五パーセント)、一・二六パーセント、一・五パーセント、一・七五パーセント、二・〇パーセント、二・二五パーセト、二・五〇パーセント、二・七五パーセント、三・〇パーセント、それより神奈川方面寄りは三・〇パーセントとなつており、右道路の線形は一、〇〇〇メートル以上の曲線半径からなつているが、右保土ケ谷陸橋上は直線々形をなし、排水の点においても難点のないこと。

(3)  右保土ケ谷陸橋の路面は、同四一年三月上り線につき厚さ約二・五センチメートルのアスファルトコンクリート、その上に厚き約一・五センチメートルのデイツクシール舗装による補修工事、同年七月ころ下り線につき同様の補修工事がなされたほか、同陸橋全面にわたり同年一二月、同四二年二月、同年五月、同年六月といずれも逆滲透式舗装による補修工事が行なわれ、同年一二月中央分離板が設置されたこと。

(4)  路面の摩擦係数は、道路供用後一ないし二年間に著しく変化し、その後経過年数が多くなつてもあまり変化しないものとされ、また、すべりによる交通事故を防止するためには、自動車の停止に必要な区間において安全な摩擦係数を示せば足り、各測点毎に安全な摩擦係数を示す必要はないとされているが、同四一年九月一三日訴外日本舗道株式会社が測定した本件保土ケ谷陸橋上の一七測点における湿潤時のすべり抵抗値は、最少五〇、最大六二でその平均値は五七(摩擦係数に換算すると〇・五七。すべり抵抗値を一〇〇で除したものが摩擦係数である。)であり、同四二年八月三日第一審被告公団が測定した右陸橋上の六測点における摩擦係数(補正温度摂氏二〇度)は、最少〇・五三三、最大〇・六四であつてその平均値は〇・六〇四であること。

(二)  以上の事実に基づいて、第一審被告公団が本件保土ケ谷陸橋の設置並びに管理につき瑕疵を有していたかどうかについて考察を加える。

(1)  本件保土ケ谷陸橋を含む付近の道路(横浜新道)は、昭和三四年九月に竣工したものであるが、前認定の巾員、線形、視距、勾配、路面(但し、その摩擦係数については後に説示する。)排水などの点からみると、現行道路構造令にも適合する一般道路であつて、道路の幾何構造的に、いわゆる特殊な制動の多い場所に該当しないことが明らかである。<証拠省略>によると、本件保土ケ谷陸橋を通過する車両は昭和四一年中において約一、三〇七万台に達していることが認められるから、右陸橋竣工後約六年半ころから屡々路面の補修工事をしたとの前示事実をもつてしても、いまだ右認定を動すことはできない。なお、本件事故現場が右陸橋上であるところから横風の点を考慮すべきであるとしても、<証拠省略>によると、自動車の異常走行を来す横風は風速二〇メートル以上であることが認められる(<証拠省略>によると、本件事故当時の風の状態は特に強いと感じない程度のものであつた事実を認めることができる。)から、右陸橋が、通常横風の強い影響を受け横すべりの危険があるということもできない。

(2)  次に、<証拠省略>によると、路面の摩擦係数は、舗装工種、施工方法によつて影響されるばかりでなく、路面の汚水タイヤの空気圧や踏面の状況、積荷の有無とその重量、走行速度、ハンドル、ブレーキ操作の遅速、強弱、降雨、降雪、すなわち路面の構造、状態、その上を走行する自動車の状態、これを運転する運転手の動作及び気象条件など諸種の要因によつて複雑に左右され、定量的に把握することが困難であること、そのためこれら諸種の要因を考慮し、諸外国の推奨値、たとえばアメリカの〇・三七(地方幹線道路)、イギリスの〇・四〇(但し横すべり摩擦係数)などを参考とし、わが国における走行速度六〇キロメートル毎時における摩擦係数は、特殊な制動の多い場所では〇・四五以上、一般道路においては〇・四以上、いかなる条件のもとにおいても〇・三より少なくならないようにするのが望しいとされている、との事実を認めることができる。そして、本件保土ケ谷陸橋は特殊な制動の多い場所でなく、一般道路に該当すること、本件事故前の昭和四一年九月一三日に測定した右陸橋上の摩擦係数の平均値が〇・五七、最低でも〇・五〇であることは、前示認定のとおりであり、これを走行速度六〇キロメートル毎時に換算した摩擦係数の平均値が〇・四七である(この場合における温度差はさしたる影響を及ぼさない。)とのことは、<証拠省略>によつて認めることができる。そこで、本件保土ケ谷陸橋上の右摩擦係数をわが国における前示推奨値に比較してみると、これに勝るとも劣るものでないことを知り得るのである。ちなみに、<証拠省略>によつて認められる摩擦係数は、東名、中央東北、北陸、九州各高速道路における路面温疫摂氏三五度、走行速度八〇キロメートル毎時の場合の平均値が〇・四三、一般国道における走行速度六〇キロメートル毎時の場合が〇・四〇五ないし〇・四一三である。

以上の事実によれば、本件事故当時、保土ケ谷陸橋における路面の摩擦係数が異常に低く、そのため特にスリツプし易い状態にあつたものということはできない。もつとも、<証拠省略>によると、本件保土ケ谷陸橋上における昭和四一年五月二二日から同年一一月一三日までの自動車による事故件数は一四件、そのうち雨天(路面湿潤の場合を、含む。以下同じ。)のものが一〇件、右一〇件のうち中央線を越えたもの七件、スリツプを伴なつたもの五件であつて、右陸橋上の事故率、ことに雨天の事故率が高かつたこと、そのようなことから、神奈川児警察本部長は同年一二月六日付書面をもつて第一審被告公団東京支社長に対し、保土ケ谷陸橋上の事故が一一月二六日現在二二件に達したのでスベリ止めの舗装と中央分離帯の設置を要望した事実を認めることができる。他方、<証拠省略>によると、本件事故後の同四二年一月二二日から同年一〇月一七日までの間における右陸橋上の白動車による事故件数は二七件、そのうち雨天のものが二五件、右二五件のうち中央線を越えたものが一三件、スリツプを伴なつたものが七件であり、依然として右陸橋上における事故率の高いことが認められる。しかしながら、路面の摩擦係数は、湿潤時の場合乾燥時に比較して著しく低下するものではあるが、右陸橋上における摩擦係数が他の一般道路に比して遜色のないことは前示のとおりであること、<証拠省略>によると、速度の出し過ぎ、ブレーキ、ハンドル操作の不手際、追越しの不適切などが少なからず事故の原因となつていることが窺われるばかりでなく、後者の事故が同四一年一二月以降屡々施工された逆滲透式舗装による路面補修の間に生じたものであることは前示事実に徴して明らかであり、これらの事実によると、本件保土ケ谷陸橋上において、ことに雨天に事故が多発しているとの事実から、右認定を覆えすことはできず、他にこれを動かすに足る証拠は存しない。

(3)  なお、本件事故当時保土ケ谷陸橋上の中央線はキヤツアイをもつて標示され中央分離帯の存しなかつたことは、前認定のとおりであり、当時同所に中央分離帯が設置されていたとするなら、少なくとも本件のように中央線を越え対向車線に進入して事故を起すことはなかつたものということができよう。しかし、本件事故当時中央分離帯を設置する必要があつたかどうか、その必要があつたとしても、第一審被告公団がこれを設置しなければならない程度に達していたかどうか、換言すれば、第一審被告公団が保土ケ谷陸橋に中央分離帯を設置せずにこれを供用したことが、右陸橋の設置、または保存につき通常備えるべき安全性に欠けていたことになるとの点については、これを肯認するに足りる証拠は存しない。

(三)  以上要するに、第一審被告公団は、本件事故現場を含む保土ケ谷陸橋の設置、または保存に瑕疵が存したということはできないから、これがあることを前提とする第一審原告らの第一審被告公団に対する本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、失当として、棄却を免れない。

六  進んで損害額の点について審究する。

(一)  逸失利益

<証拠省略>によると、被害者智美は昭和一〇年一一月二六日生れの、事故当時三一年の男子であつて同四〇年一一月から四一年一〇月までの収入が金八三万〇、三〇二円(一カ月平均金六万九、一九二円)であることが認められるから、本件事故がなかつたなら、少くとも同四二年、同四三年は右と同額、同四四年から同五〇年末まで第一審原告ら主張のとおり金員、以上合計金一、一九六万五、八〇四円の収入があり、職業、家族構成、消費生活単位などを考慮すると、そのうち同人の生活費として必要な部分は年間収入の二分の一と認めるを相当とするから、これを控除した同人の純益は金五九八万二、九〇二円となる。

右の事実によれば、右智美は同五一年一月からなお二〇年間就労が可能であつたというべきであるから、同五〇年の年間純益金一〇三万四、八五〇円によりその間の逸失利益を算出し、ホフマン式計算法により民法所定年五分の割合による中間利益を控除して同五〇年一二月末日におけるその現価を算定すると、金一、四〇九万〇、五一八円になる。以上合計金二、〇〇七万三、四二〇円が右智美の逸失利益となる。

(二)  慰藉料

以上に認定した事実関係、第一審原告らの家族構成、年令その他諸般の事情を考慮すると、右智美及び第一審原告節子は各金一五〇万円、第一審原告秋山、同紘子は各金二五万円をもつて、その精神的苦痛が慰藉されるべきものと認めるのが相当である。

(三)  相続

<証拠省略>並びに弁論の全趣旨を総合すると、第一審原告節子は智美の妻、同秋山、同紘子はその妹であつて、他に相続人の存しない事実が認められるから、第一審原告らは右智美の死亡による相続によつて同人の有した前示損害賠償請求権を各相続分に応じて、すなわち第一審原告節子は三分の二に相当する金一、四三八万二、二八〇円、同秋山、同紘子は各六分の一に相当する金三五九万五、五七〇円を、承継取得したものといわなければならない。

(四)  損益相殺

第一審原告らが本件事故により自賠法による保険金一五〇万円の支払いを受けた事実は、同原告らの自陳するところであるから、これを各相続分に応じて損害額から控除すると、その残額な、第一審原告節子において金一、四八八万二、二八〇円、同秋山、同紘子において各金三五九万五、五七〇円となる。

(五)  弁護士費用

以上に認定した事実その他諸般の事情を総合すると、弁護士費用は、第一審原告節子において金一二〇万円、同秋山、同紘子において各金三〇万円が相当であると認める。

七  以上の次第であるから、第一審原告らの本訴請求は、第一審被告会社に対し、第一審原告節子において金一、六〇八万二、二八〇円及びそのうち慰藉料(相続した分を含む。)から前示保険金を控除した金一五〇万円に対する本件不法行為の日の翌日たる昭和四一年一一月二六日から、相続した被害者智美の逸失利益金一、三三八万二、二八〇円に対する不法行為後の同五一年一月一日から各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金、第一審原告秋山、同紘子において各金三八九万五、五七〇円及びそのうち慰藉料(相続した分を含む。)から前示保険金を控除した金二五万円に対する本件不法行為の日の翌日たる同四一年一一月二六日から、相続した被害者智美の逸失利益金。三三四万五、五七〇円に対する本件不法行為後の同五一年一月一日から各完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度においては、正当として認容すべきものであるが、同第一審被告に対するその余の請求及び第一審被告名川、同公団に対する請求は、いずれも失当として棄却すべきものである。

八  よつて、第一審原告らの第一審被告会社に対する本件控訴は理由があるから、原判決を取消し、右の限度で請求を認容し、当審で拡張したその余の請求を棄却し、第一審被告名川同公団に対する本件控訴及び当審において拡張した請求は、いずれも理由がないから棄却し、第一審被告公団の本件控訴は理由があるから原判決を取消し第一審原告らの請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第九五条、第八九条、第九二条、第九三条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡本元夫 鰍沢健三 長久保武)

別表

年度

(昭和)

智美の

年令

平均月給与額

平均年間賞与

等特別給与額

平均年間

収入額

年間平均

純益額

42

32

67,946

815,352

520,152

43

33

67,946

815,352

570,745

44

34

60,600

133,500

860,700

602,490

45

35

74,400

185,300

1,078,100

754,670

46

36

82,700

216,900

1,209,300

846,510

47

37

93,900

250,900

1,377,700

964,390

48

38

113,300

280,400

1,640,000

1,148,000

49

39

141,000

377,700

2,069,700

1,448,790

50

40

141,000

377,700

2,069,700

1,448,790

11,935,904

8,304,537

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